*研究領域
教育心理学・社会心理学・教育工学の視点・手法を用いて、意志・意欲の観点から、人が主体性を発揮しながら社会に適応していくプロセスを明らかにするとともに、これを支援する社会・教育の仕組みづくりを目指しています。
*主な研究テーマ
主な研究テーマは以下の通りです。その他、意志・意欲や社会性についての専門知や、心理実験・測定・調査の技術を使った(共同)研究等々も行っています。 またまとまったら整理します。以下に載せていない成果については、こちらの一覧もご参照ください。
「やらなきゃいけないとわかっているのにやる気が出ない」というのは、多くの人に経験したことがあることだと思います。 「やらなきゃいけないこと」は往々にして社会規範や長期的な利得に関わるものであり、主体的・意欲的に取り組めることは社会適応において重要な要素だと考えられます。 学習意欲を自ら高く持つための方略や、学習意欲を高めるためのサポート方法、「やらなきゃいけないこととやりたいこと」の葛藤に対処するための鍵などを明らかにすることで、 主体的な意志・意欲をもって「やらなきゃいけない」と思っていることに取り組めるようになるにはどうすればよいかを考えています。
<関連する成果>
- 後藤崇志・山下冬華 (印刷中) 大学生の課題に対する内発的動機づけ・解釈レベルと先延ばしの関連, 日本教育工学会論文誌, 48.[Link]
- Goto, T. (in press). Brief research report: The impact of a utility-value intervention on students’ engagement. The Journal of Experimental Education.[Link]
- 後藤崇志 (2022). 主体的学習と感情制御. 有光興記(監修) 飯田沙依亜・榊原良太・手塚洋介(編) 感情制御ハンドブック. 北大路書房. 第21章, pp.226-234. [出版社][Amazon]
- 後藤崇志 (2020) 「セルフコントロールが得意」とはどういうことなのか―「葛藤解決が得意」と「目標達成が得意」に分けた概念整理 心理学評論, 63, 129-144.[Link]
- 後藤崇志・川口秀樹・野々宮英二・市村賢士郎・楠見 孝・子安増生 (2017) 自律的動機づけと動機づけ調整方略の双方向的関係. 心理学研究, 88, 197-202.[Link]
- Goto, T. & Kusumi, T. (2015). The effects of regret on internalization of academic motivation: A longitudinal study. Learning and Individual Differences, 37, 241-248. [Link]
- Goto, T. & Kusumi, T. (2013). How can reward contribute to efficient self-control? Reinforcement of task-defined responses diminishes ego-depletion. Motivation and Emotion, 37, 726-732.[Link]
「何かをしたい」あるいは「何かをしなければならない」という意志・意欲はどこからともなく湧いてくるわけではありません。 他者との関わりの中で、あるいは社会の規範や制度との関わりの中で、自分が「したいこと」や「しなければならないこと」を考えるようになることもあると考えられます。 人々の意志・意欲に関わる傾性(人格・特性・能力)が他者や社会の規範・制度との関わりのなかでどのように形成され、変容していくのかを明らかにすることで、 主体性の発揮と社会への適応を実現しやすくなる社会の手がかりを得たいと考えています。
<関連する成果>
- Goto, T. (2023). Normative information can induce biased choice toward delayed larger rewards in adulthood. Asian Journal of Social Psychology, 26, 351-362.[Link]
- 後藤崇志・石橋優也・後藤大樹 (2021) 親の学習観と子の学習への取り組みの関連の予備的検討 日本教育工学会論文誌, 44(Supp.), 125-128.[Link]
- 後藤崇志・石橋優也 (2020) 親の学習観が子の学業達成に果たす役割についての文化的再生産論に基づく検討 パーソナリティ研究, 28, 187-197.[Link]
人の心の仕組みについて、一定の考えをもつことは心理学者をはじめとした研究者だけの専売特許ではなく、人々は「心ってこんな感じだろう」という信念を持って生きています。 こうした人の心、特に意志・意欲に関する信念がどのような構造・特徴を持っており、ふだんの考え方や行動などにどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることで、 意志・意欲についての専門知の科学コミュニケーションのあり方について考えています。
<関連する成果>
- Goto, T. (2021). Comparing the psychometric properties of two Japanese-translated scales of the Free Will and Determinism-Plus scale. Frontiers in Psychology, 12:720601.[Link]
- Goto, T., Ishibashi, Y., Kajimura, S., Oka, R., & Kusumi T. (2018) Belief in free will indirectly contributes to the strategic transition through sympathetic arousal. Personality and Individual Differences, 128, 157-161.[Link]
- 後藤崇志 (2017) 達成目標と動機づけ調整方略の有効性の認識の適切さ. パーソナリティ研究, 26, 163-166.[Link]
- 後藤崇志・石橋優也・梶村昇吾・岡 隆之介・楠見 孝 (2015) 日本版自由意志・決定論信念尺度の作成. 心理学研究, 86, 32-41.[Link]
「馬を水辺に連れていくことはできても、馬に水を飲ませることはできない」と言うように、いかに効果的だと思う教育・学習の機会や社会制度を作ったとしても、それを全ての人が活用してくれるとは限りません。 実際に利用している人々の特徴を分析すると、実は、本当に使ってほしかった人々にあまり使ってもらえていない、ということもあり得ます。 教育・学習の機会や社会制度に対する人々の現状の認識の把握や、新しい「工夫」の効果を検証することを通して、幅広い層の人々から「活用したい」という意志・意欲を引き出すにはどのように設計することが必要なのかを考えています。
<関連する成果>
- Goto, T., Kano, K., & Shiose, T. (2024). Achievement goal impacts students' preferences for "personalized problems" in computer-adaptive tests. Japanese Psychological Reserach, 66, 154-165.[Link]
- Goto, T., Kano, K., & Shiose, T., (2023). Students' acceptance on computer-adaptive testing for achievement assessment in Japanese elementary and secondary school. Frontiers in Education, 27:1107341.[Link]
- 後藤崇志・加納圭 (2023) 初等・中等教育における学びの個別最適化に向けたEdTech利用の社会受容−倫理的・法的・社会的課題(ELSI)の視点に基づく調査 人間環境学研究, 21, 3-13.[Link]
- 後藤崇志・加納圭 (2021) 商業施設での科学ワークショップの参加者層評価−科学への関心・意欲の多様な層のワークショップ参加を目指した試み 日本教育工学会論文誌, 45, 113-126. [Link]
- 田口真奈・後藤崇志・毛利隆夫 (2019) グローバルMOOCを用いた反転授業の事例研究?日本人学生を想定した授業デザインと学生の取り組みの個人差. 日本教育工学会論文誌, 42, 155-169.[Link]
- Goto, T. & Taguchi, M. (2018) Motivation for learning in Massive Open Online Courses differs according to the learners' socioeconomic backgrounds: Meta-analytical results of synthesizng seven courses. Journal of Human Environmental Studies, 16, 17-23.[Link]
- Goto, T., Nakanishi, K., & Kano, K. (2018) A large-scale longitudinal survey of participation in scientific events with a focus on students' learning motivation for science: Antecedents and consequences. Learning and Individual Differences, 61, 181-187.[Link]
- 後藤崇志・水町衣里・工藤 充・加納 圭 (2014). 科学・技術イベント参加者層評価に豪州発セグメンテーション手法を用いることの有効性. 科学技術コミュニケーション, 15, 17-35.[Link]
*過去に指導した修士論文・卒業論文
---滋賀県立大学 大学院人間文化学研究科 生活文化学専攻 人間関係部門---
<2021年度> 恋人がいない人が否定的に評価される要因―評価対象が抱く恋人を求める願望に注目して
---滋賀県立大学 人間文化学部 人間関係学科---
<2021年度> 学習において先延ばし頻度の高い人と低い人の先延ばし行動時の意識の比較 援助により立ち直った事例を読むことが援助要請意識を変えるか―パパゲーノ効果の視点から アンコンシャスバイアスの存在を知る際の当事者の語りの有無は偏見を含む表現への気づきに影響するか 協力する可能性の有無は利他的行動の連鎖に影響するか
<2020年度> 「あがり」を認識すると、メッセージの説得力は弱く受け取られるのか 理想的な体型を目指した運動の対自的意味―自己認知に注目して― 着衣の色が着用者の自己認知に及ぼす影響―日常的な着衣の調査と実験室実験から検討して― DRMパラダイムを用いた色彩連想語の虚再認
<2019年度> 「かわいい」「おいしい」という言葉への同調の帰結―相手との関係性や同調志向とのかかわり― あがりの感じ方はスピーチの聞き手と話し手で違うのか 大学生が「恋人がほしい」と思うことと恋人がいる人・いない人ステレオタイプの関連 友人と共同で選択することは優柔不断な傾向を増すのか なぜ限定化粧品に惹かれるのか―購入後の満足度に注目して― 曖昧な指示を文脈に沿って理解できる人とできない人の間には何があるのか―視線計測を使った実験による検討―
<2018年度: 細馬宏通先生と合同> 意識的・無意識的思考は母語話者・非母語話者に対する真偽判断を左右するか ツイッター一時創作企画の活動初期における集団の創発 話し合いの中での肯定的、否定的応答が傍観者効果に及ぼす影響 非明示的な命令は服従を生起させるのか―忖度のミルグラム実験― 日用品の選択はラベルの好みによって変化するのか―口紅の色と色名に注目した実験的検討―